相続土地を兄弟姉妹で分割する具体的手法を解説【測量・分筆登記編】

親が亡くなって土地を相続した。この相続した土地を、兄弟姉妹でどのように分け、どのように処分していけばいいのか、悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

思い出の詰まった実家ですが、時代の流れでしょうか、「土地を所有・管理すること」を重荷に感じてしまう場面も多々あると思います。

きちんと兄弟姉妹で話し合いをして、今後の争いが無いように分けて、今後の活用方法、処分方法を検討したいですよね。

相続した土地をどのように分ければいいのか。土地の遺産分割方法としては何パターンかあり、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割といった4種類のものがあります。

本記事では、この4つの分割方法の中でも特に現物分割(現物分割とは実際に土地や絵画、ダイヤモンドなど現実の物を相続人で分けることです)することにした土地を、実際に分筆する手続きについて詳しく解説します。現物分割を選択した後に、さらに実際の土地を分ける場合、土地の確定測量をした上で分筆登記という手続きを行い、最後に、権利の登記を行います。

共有のままでは、何もするにも兄弟での話し合いが必要です。共有地のままにしておくのは面倒くさいばかりか、処分するにも一人で決めることができません。

今回は現物分割の中でもさらに土地を分筆する方法について測量登記の専門家である土地家屋調査士が、各手続きの手順やポイントについて分かりやすくお伝えしますので、是非、参考にして分割手続きを完了させてください。

1 相続土地を分割する方法は4つあります

相続土地を分割する方法は4つあります。
①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4つです。相続人が複数いるケースでは、他の現金などの遺産を含め、どの方法を選択するか、話し合って決める必要があります。

①現物分割を選択した場合で、さらに土地を現実に東西や南北に分ける場合、測量や分筆登記が必要になります。

土地家屋調査士はこの分野の専門家ですので、遺産分割協議中に弁護士、税理士、司法書士などから相続土地の確定測量・分筆登記の依頼をいただくことも非常に多いです。

次章以降では、現物分割の場合のさらに土地を分筆する場合に特化して徹底的に解説いたします。是非、読み進めて分割の参考にしてください。

 

2 相続した土地を分割(現物分割)する3つのSTEP

相続した土地を分割して、それぞれの単独所有にする方法は大きく分けて3つのSTEPがあります。

具体的に東側は兄、西側は弟といったように具体的に分割する手続きについて解説します。
まずは、大枠を把握してください。

STEP1 確定測量(3~6章で解説)

相続して分ける土地の外周りの範囲を確定させる測量を行います。
これを確定測量といいます。

STEP2 分筆登記(3~6章で解説) 

確定測量が完了したら、相続人全員で分筆登記を行います。分筆登記は法務局へ図面を提出します。分筆登記は相続人全員から申請します。

STEP3 相続登記(7章で解説)

分筆登記が完了すると、司法書士へ相続登記を依頼します。
分割した土地に対して、相続した方から所有権移転登記を申請し単独所有にします。

以上が、相続した土地を分筆して単独所有にする原則的な大きな流れになります。
次章では、確定測量・分筆登記の部分について、具体的な手続きを詳しく解説します。

3 確定測量・分筆登記の手続き方法

確定測量・分筆登記の手続き方法について、順に解説していきます。

(土地家屋調査士に依頼した場合の確定測量・分筆登記手続きの流れ)

手順① 土地家屋調査士に依頼 

土地地積更正登記の申請代理人は「土地家屋調査士」となります。

個人での申請も可能ですが、測量やお隣との境界確認等がありますので通常は代理申請となります。

確定測量についての詳しい解説は、下記の記事を参考にしてください。
確定測量とは?なぜ必要なのかについて土地家屋調査士が徹底解説

土地家屋調査士は、土地家屋調査士法第1条で不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家とされています。分筆登記も表示に関する登記の一つです。

土地家屋調査士法第1条
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とする。

土地分筆登記を申請するには確定測量をしてお隣さんと境界(筆界)の確認をして土地の境界(筆界)を確定させ地積測量図を作成するという個人では非常に難しい要素が多いですので土地家屋調査士に依頼しましょう。

手順② 資料収集 

資料収集は、非常に重要な業務の一つです。測量をするポイントの参考にし、測量結果を計算により分析し、お隣さんとの境界を特定する際の根拠として使用します。

資料とは、法務局や国、都道府県、市区町村等に保管されている図面等のことを言い、具体的には公図や地積測量図や道路、水路等の図面を言います。

境界に関する、図面や売買した際の資料があれば、土地家屋調査士へ提出しましょう。

手順③ 測量 

土地分筆登記を申請するためにはすべての土地の境界(筆界)を確定させていきます。

境界(筆界)は自分の土地とお隣の土地との財産界になる重要なものです。
自分が勝手にここでいいという判断はできません。

収集した資料に基づきしっかり現地を測量していきます。
分筆登記に添付する地積測量図に測量の結果が反映されます。

最終的には、東側〇〇㎡は兄、西側〇〇㎡は弟というように、具体的に所有する位置が記載されることになります。

手順④ 計算 

測量した結果を収集した資料と照らし合わせて境界の特定をします。

「ここに境界石があるからここが境界」という特定の仕方ではなく、様々な角度から境界点を導き出していく作業となります。

この作業はジグソーパズルのピースを一つずつ当てはめていく作業のようで、そのくらい慎重で大切な作業です。

手順⑤ お隣との境界立会い 

境界の立会いの流れは下記のとおりです。

土地家屋調査士がお隣の所有者と境界の立会いを行い、どのような根拠で境界を特定したのかを説明して境界確認をしてもらいます。

その後、確認した境界点に境界標を設置して筆界確認書を取り交わします。
これで、確定測量が完了です。

境界の立会いの詳細は、「境界の立会いを依頼された。立会いは必要?土地家屋調査士が解説!」をご参照ください。

筆界確認書の取交しの詳細は、「専門家が解説!筆界確認書に署名・押印することの意味」をご参照ください。

手順⑥ 土地分筆登記申請 

土地分筆登記を申請します。

土地分筆登記の申請人は土地の所有者全員(相続人全員)となります。
(申請代理人は土地家屋調査士)

相続人が複数いる場合には、一人から申請することはできません。

土地をどのように分けるかを決め、東側〇〇㎡は兄、西側〇〇㎡は弟というように決めたら地積測量図を作成して、分筆登記を申請します。

代理人からの申請の場合の法定添付書類は、代理権限証書(委任状)と地積測量図ですが、実務上はお隣と取交わしをした筆界確認や道路等の境界が確定していることを証する図面等を添付するほか、土地家屋調査士が現地をしっかり測量、調査したことを法務局に対して報告する不動産調査報告書を添付します。

手順⑦ 登記完了 

通常、土地分筆登記を申請して1週間~2週間で登記が完了します。
(管轄法務局の混雑状況によって前後します)

土地分筆登記が完了すると全部事項証明書(登記簿)が2つに分割され、地積測量図が法務局に備え付けられます。

(分筆登記完了後の最新の地積測量図)

(41-36と41-63へ分筆された地積測量図)

(分筆登記完了後の41-36の登記簿)

(分筆登記完了後の41-63の登記簿)

確定測量・分筆登記が完了したら、最後に司法書士へ単独所有となるように相続登記を依頼して登記手続きはすべて完了です。

コラム:先に相続登記をした場合はどうなるの?

確定測量、分筆登記を行う前に、相続登記を入れた場合はどのような手続きをすれば良いのでしょうか。分割方法がまとまらず、先に法定相続割合で相続登記を入れるケースもあると思います。その場合は、確定測量・分筆登記の後に、共有物分割という権利の登記を行います。この共有物分割を原因とする持分移転登記については司法書士へ依頼します。

4 確定測量・分筆登記の費用と期間


確定測量・分筆登記の費用は、法務局へ支払う登録免許税と土地家屋調査士へ支払う費用があります。
土地家屋調査士の費用は、登記だけの費用であれば10~15万円前後ですが、分筆登記に必ず必要な確定測量の費用が面積やお隣さんの件数、道路確定を行うかどうかなどより大きく変動します。
自分で行うこともできますが、測量や図面作成が必要ですので、専門家である土地家屋調査士へ依頼することが一般的です。

分筆登記の費用登録免許税土地家屋調査士の費用
分筆後の筆数×1,000円(2つに分ける場合、2,000円)分筆登記は10~15万円前後、確定測量は幅があることが特徴、状況によって測量費含め数十万~数百万かかる

分筆登記の費用の中で、最も大きなものは土地家屋調査士の費用です。
登記費用だけであれば、筆数にもよりますが二つに分ける場合で10~15万円前後ですが、分筆登記に必要な確定測量の費用は、対象土地の状況により変動します。数十万~数百万まで様々で面積や土地の形状、関係者の人数によって変動し、幅が広いことが特徴です。

分筆登記を行うための調査や測量は高い精度が求められており、境界立会などを実施するほか地積測量図を作成するのも、一般の方には大変困難な作業となりますので、分筆登記は土地家屋調査士に依頼することをおススメします。

それでは、実際の見積書を見ていただきながら各項目について詳しく解説します。

(確定測量から行い、分筆する場合の見積書の一例)

見積の中の各項目の詳細を解説します。

①調査業務
調査業務には資料調査にかかる費用と、現地調査にかかる費用があります。

①-1 資料調査
法務局、役所等にある資料を調査する費用です。登記記録、公図、地積測量図、建物図面などの資料調査を行います。状況により、旧土地台帳、閉鎖登記簿、旧公図、旧分筆図など過去の履歴を調査する場合もあります。建築概要書、建築基準法の道路資料、所有者や近隣の方が保有する境界に関する資料の調査分析を行うケースもあります。

①-2 現地調査
筆界確認及び立会業務にかかる費用です。近隣の方へ挨拶、立会へ向けた関係構築、日程連絡等を行います。境界の復元計算、区画の調整、基礎となる境界点の確認、境界立会をします。
公共用地については、官公署が保管する資料を調査収集します。測量結果を図面化し、依頼者から必要書類を集め、その他添付書類を整え申請をします。申請後は線形の協議を進め役所の担当者と現地立会をします。

②測量業務
現地を測量及び境界標を設置する費用です。依頼の土地だけでなく、周辺土地のポイントなる箇所も測量します。測量して境界点や構造物の座標データを収集しますが、通常1~2日で完了します。追加データの収集のために追加測量を入る場合もあります。
測量データについては、公図、地積測量図、関係者の資料、過去のその他測量図等と照らし客観的な筆界点を復元していきます。
道路については、道路幅員、街区全他の幅が取れているか、他の確定している箇所との整合性及び線形調整をします。
分筆登記をするにあたり、境界点及び分割点に境界標の設置を行います。

③申請手続業務(土地分筆登記)
土地分筆登記を申請する手続費用です。法務局の管轄の確認、申請人の確認、登記申請書の作成、申請手続、登録免許税の納付手続、状況により法務局との協議対応を行います。

④書類作成
境界確定業務に関する書類作成と土地分筆登記に関する書類作成等の費用です。筆界確認書の作成及びその収集を行います。公共用地については、手数料を支払い、証明書の取得を行います。
土地分筆登記に必要な地積測量図の作成、不動産調査報告書の作成、地形図(分筆登記後の公図)の作成、登記完了後の登記事項全部証明書の取得手続を行います。

⑤材料費
境界杭や金属標、鋲などのほか、各種郵送費用、交通費などの諸経費などです。

確定測量・分筆登記にかかる期間は、一般的に以下のようになっています。

確定測量・分筆登記をスムーズに進めるためには、まず確定測量の段階で近隣ご挨拶と境界立会について、出来る限り所有者自らがお隣へ行き挨拶をすることが重要です。境界に関する書類へサインと押印をいただく場合もあり、関係がスムーズであれば、確定測量がスムーズに行くことが多いです。

5 確定測量・分筆登記を専門家へ依頼する時のポイント


確定測量・分筆登記を専門家へ依頼する時のポイントは、事務所の近さや安さだけで選ぶことなく、親身になって相談に乗ってくれるなど、信頼のできる事務所を選ぶことです。

依頼先は、土地家屋調査士法人、土地家屋調査士です。

土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記及び筆界に関する専門家で、確定測量・分筆登記の代理ができるのは土地家屋調査士です。

確定測量・分筆登記を実施するには、お隣の所有者との協議や境界承認という手順を踏むほか、間違いなく測量及び計算を行い、確定測量・分筆登記を実行する必要があります。

したがって、依頼する時は、下記のようなポイントをしっかり確認しましょう。

良い選び方
1.信頼できる
2.親身になって相談してくれる
3.見積額、注意点を示してくれる

悪い選び方
1.事務所が近いことだけで選ぶ
2.費用が安いことだけで選ぶ
3.適当に選ぶ

 

6 確定測量・分筆登記の注意点


確定測量・分筆登記の注意点は、お隣さんとの境界の確認が出来ない場合、すぐには分筆ができない場合があります。

分筆登記を行うには、お隣さんとの境界確認が完了していることを立会証明書や筆界確認書といった書類で示すか、法務局が行う現地調査にて筆界に異議がない旨を述べてもらい登記官が筆界を確認できることが必要です。

お隣さんとの関係が悪く、協力いただけない場合や、境界の位置の認識に齟齬がある場合には、直ちに分筆が出来なくなり、筆界特定制度や境界確定訴訟などを使い、1年~数年かけてようやく土地の外周りが確定できたといった事例もあります。

このような、土地の境界に関する問題が潜在的にありますので、出来る限り生前に予防的に確定測量を行っておくことが重要です。

7 相続登記

相続登記とは、相続を原因として所有権(持分の場合もあり)を移転する登記のことです。

相続登記は、専門家に依頼する場合には司法書士に依頼します。相続登記には、登録免許税がかかり、司法書士に依頼する場合には加えて司法書士費用がかかります。

POINT

分筆登記と相続登記の比較まとめ

 

登記の種類依頼する専門家費用期間
分筆登記土地家屋調査士確定測量費と分筆費用確定測量入れて3か月~
相続登記司法書士登録免許税と報酬戸籍収集入れて2か月~

*費用や期間は、各土地の固定資産評価額、土地の形状、面積などの状況により変動します

 

 

8 まとめ


相続土地を分割する方法は4つです。

その中でも、①現物分割で、さらに土地を兄弟姉妹で分ける時には、確定測量・分筆登記を行います。

確定測量・分筆登記の流れは下記のように進めていきます。

確定測量・分筆登記の費用は、主に金額が大きいのは土地家屋調査士に依頼する確定測量の費用です。これは、土地の面積や道路の状況で大きく変動するのが特徴で、数十万~数百万かかる場合もあります。

分筆登記を終えたら、司法書士へ単独所有にする登記を依頼して完了です。
  

 

分筆登記の費用登録免許税土地家屋調査士の費用
分筆後の筆数×1,000円(2つに分ける場合、2,000円)分筆登記は10~15万円前後、確定測量は幅があることが特徴、状況によって測量費含め数十万~数百万かかる

確定測量・分筆登記にかかる期間は、200㎡ほどの土地で順調にいって3~4か月が目安ですが、近隣と境界トラブルなどがあると、筆界特定や境界確定訴訟などを行うことになり1年~数年かかってしまうこともありますので注意が必要です。

分筆登記が終わったら、相続登記を行います。

以上、相続した土地を現物分割として兄弟姉妹で実際に分筆登記する手続きについて解説してきました。

是非、これらの手続きを一つ一つ実行していけば、相続土地を兄弟で実際に分け、単独名義とし、自分の思うままに、有効活用し処分できるようになります。

思い出の詰まった親から受け継いだ大切な土地です。兄弟姉妹で良く話し合い、土地を安心安全に適切な手順で分割し、形は変わったとしても、また次世代へと継承していきましょう。

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