未登記建物の取り壊しはOK!取り壊し前後の手続きを徹底解説

「未登記建物って取り壊してもいいの?」
「未登記建物を安全に取り壊したい…」
所有している建物を取り壊そうと思ったら未登記建物だった場合、何か手続きが必要なのか、そもそも取り壊しても問題ないのか気になりますよね。とはいえ何も知らずに取り壊した後で、法的な問題やトラブルが起こるのは避けたいものです。
結論からお伝えすると、未登記建物の取り壊し自体は可能です。
ただし、取り壊し前に所有者の有無や登記状況を確認しておくことが必要で、未登記の建物であっても所有者がいる場合には勝手に取り壊すことはできません。
もし、所有者がいるにも関わらず勝手に建物を取り壊してしまった場合、「建造物損壊罪」や「所有権侵害」と見なされて懲役が課されたり損害賠償を請求される恐れがあります。
そのような事態を避けるためには、取り壊し前に必ず所有者の有無や登記状況を確認しておくことが重要です。
さらにこの記事では、以下の内容も併せて解説しています。

この記事を読めば分かること

・未登記建物の取り壊しを行う際の主な流れ
・未登記建物の取り壊しにかかる費用
・未登記建物取壊し後の手続きを専門家に依頼すべきケース
未登記建物を取り壊すリスクを回避して、安全に取り壊しを完了したいとお考えの方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

1.未登記建物の取り壊し自体は可能

未登記建物の取り壊しや解体自体は可能です。
ただし、他に建物の所有権を主張する人・相続する人がいない場合に限定され、未登記建物であっても所有者がいる場合には勝手に取り壊すことはできません。
もし、所有者がいるのに勝手に取り壊しをした場合は「建造物損壊罪」や「所有権侵害」に当たり、
・最大5年以下の懲役が課される
・民事上の責任も問われて多額の損害賠償を請求される
などの恐れがあります。
このような事態を避けるためには、例え未登記の建物だとしても取り壊す前に「所有者の有無」や「相続・贈与の予定があるか」を明確にしておくことが重要です。
所有者の有無については「2-1.【取り壊し前】所有者・建物の登記状況を確認する」で詳しく解説しているので、そちらをご参考ください。
また、相続の予定については、親族の方や心当たりのある方に聞いてみるのがおすすめです。

2.未登記建物の取り壊しを行う際の主な流れ

ここからは、未登記建物の取り壊しを行う際の具体的な流れをご紹介します。
取り壊し前 所有者の有無や建物の登記状況を確認する
取り壊し解体業家に解体を依頼する
取り壊し後家屋滅失届の提出を行う
それでは、順番に詳しく解説していきますので全て目を通して概要を把握しましょう。

2-1.【取り壊し前】所有者・建物の登記状況を確認する

まずは、建物を取り壊す前に所有者の有無や建物の登記状況を確認しなければなりません。
所有者の有無や建物の登記状況を確認する方法は、以下の通りです。
法務局で全部事項証明書を請求する 法務局で「全部事項証明書※」を請求し、取得できなければ未登記建物だと判断できる
固定資産税納税通知書を確認する 納税通知書同封の「課税明細書」に家屋番号の記載がなければ未登記である可能性が高い

※その建物の過去から現在までの全ての登記記録が記載されている証明書

未登記建物の場合は登記事項証明書自体が発行されていないため、法務局で「全部事項証明書」が請求・取得できなければ未登記物件だと判断できます。
また、固定資産税納税通知書に同封されている「課税明細書」に家屋番号の記載がなければ、未登記建物である可能性が高いでしょう。
ただし、家屋番号の記載がないのは自治体のミスによるものである可能性もあるため、確実に未登記建物であるとは断言できません。したがって、全部事項証明書を請求するのが一番確実な確認方法だと言えます。

2-2.【取り壊し】解体業者に解体を依頼する

建物が本当に未登記であり、所有者もいないことが確認できて初めて取り壊しを行うことができます。
その際は、以下のポイントを満たす解体業者に依頼するのがおすすめです。

未登記建物を取り壊す場合の解体業者の選び方

・未登記建物の取り扱いに慣れている業者を選ぶ
・現地調査を実施して適正に見積もりしてくれる業者を選ぶ
・解体後の目的に合わせて仕上げてくれる業者を選ぶ
・近所の挨拶回りに同行してくれる業者を選ぶ
・工事中断の可能性を考慮して柔軟に対応してくれる業者を選ぶ

 

解体業者選びで特に重視したいのが、「未登記建物の取り扱いに慣れている業者を選ぶ」ことです。
なぜなら、未登記建物の取り扱いに慣れている業者だと、「十分に所有者や登記状況を確認しないまま解体してしまった」という状況を回避でき、安全に取り壊しを行える可能性が高いからです。
また、未登記建物特有の手続きについて熟知している業者であれば、建物取り壊し後に必要書類をすぐ発行してくれたりと、その後の手続きもスムーズに進められるでしょう。

2-3.【取り壊し後】家屋滅失届の提出を行う

未登記建物を取り壊した後は、「家屋滅失届」を提出する必要があります。
家屋滅失届とは、未登記建物が滅失したことを自治体に証明する手続きで、登記された建物が滅失した場合に行う「滅失登記」とは異なります。
滅失届の提出書類・提出期限・提出先は以下の通りです。
提出書類
・家屋滅失届出書
→市町村役場の窓口※や自治体のHPからダウンロード※する
・建物滅失証明書
→解体工事後、業者が発行する
・解体業者の代表者事項証明書および印鑑証明書
→解体業者が発行・取得する
・解体前後の建物の写真や位置図(必要な場合のみ)
→写真:解体前後に写真を撮り、日付を記入しておく
 位置図:ネット上の地図や市販の地図を印刷して印をつける
提出先 市町村役場の税務課や資産税課
提出期限
基本的に取り壊しが完了してから30日以内
(自治体によって異なる)
※東京都の場合
未登記建物を取り壊した後に滅失届の提出を怠ると、存在していない建物に対して固定資産税がかかり続けたり、土地の相続や売買が難しくなるリスクがあるため、必ず提出しましょう。

3.未登記建物の取り壊しにかかる費用

3章では、未登記建物の取り壊しにかかる費用について解説します。
未登記建物の取り壊し〜家屋滅失届提出完了までにかかる費用と内訳は、以下の通りです。
取り壊し前 所有者の有無や建物の登記状況調査にかかる費用:0円
取り壊し
解体工事を行う費用:30坪で90〜240万円前後
(自治体によって解体に使える補助金制度もあり)
取り壊し後 家屋滅失届の準備・提出にかかる費用:0〜5万円程度
それでは、それぞれの費用と内訳について、以下より詳しく見ていきましょう。

3-1.所有者の有無や建物の登記状況調査にかかる費用|0円

未登記建物の所有者の有無や建物の登記状況の調査にかかる費用は、基本的に無料です。
所有者や登記状況を調べるためには、法務局で「全部事項証明書」を請求することになりますが、そもそも未登記の場合は証明書が取得できないため、支払う費用はありません
また、固定資産税納税通知書も自治体から毎年送付されてくるものなので、支払いは一切発生することなく確認ができます。

3-2.解体工事を行う費用|90〜240万円前後

未登記建物の取り壊しで一番高額になるのは解体工事の業者に支払う費用で、「坪単価×坪数」で決まります。
具体的な解体費用の目安は、以下の通りです。
木造
3〜5万円
30坪の場合:90〜150万円前後
鉄骨造
5〜7万円
30坪の場合:150〜210万円前後
RC造(鉄筋コンクリート)
坪単価:6〜8万円
30坪の場合:180〜240万円前後
さらに、解体工事に関連する費用としては、以下のようなものもあります。
アスベスト撤去1万〜8.5万円/㎡
残置物処分 1万円/㎡
給排水設備撤去 30万円前後/20m
井戸の埋め戻し10万円程度
他にも、建物の大きさや状態によっては追加で費用がかかる可能性があります。

【自治体によって建物の解体に使える補助金がある!】

自治体によっては、建物の解体に使える補助金制度を設けている場合があるため、そのような制度を利用すれば解体工事にかかる費用を抑えることができます。
代表的なものだと
などの制度がありますが、自治体ごとに制度の内容や助成金額は異なるため事前の確認が必須です。
1回の助成費用の目安としては、
・総額の2分の1〜3分の1を補助する
・総額の〇〇円までを補助する(上限が50万円など)
などが多いです。
予算には限りがあるため制度を利用したい方は早めに申請するのがおすすめです。
※東京都の場合

3-3.家屋滅失届の準備・提出にかかる費用|0〜5万円程度

家屋滅失届の準備や提出にかかる費用は0〜5万円程度ですが、自分で届出をするのか・専門家に依頼するのかで大きく変動します。
自力で手続きを行う場合
0〜1000円程度
(交通費などの実費は別にかかる)
土地家屋調査士に依頼する場合 5万円+税〜
自力で手続きを行う場合にかかるのは、主に提出書類の取得と役場までの交通費などの実費です。
一方で、専門家である土地家屋調査士に手続きを依頼する場合は5万円〜が相場です。ただし、土地家屋調査士に依頼する場合は、「登記された建物と未登記家屋が混在している」など、特殊なケースとなります。
詳しくは次の章をご覧ください。

4.建物の権利関係が複雑な場合や一部取り壊す場合は土地家屋調査士に依頼するのがおすすめ

家屋滅失届の提出自体は比較的簡単であるため、基本的には自力で対応できます
しかし、以下のような場合には面積の測量が難しいため、土地家屋調査士へ依頼することでスムーズに手続きを終えられるでしょう。

家屋滅失届の提出を土地家屋調査士に依頼すべきケース

・複数の未登記建物を取り壊し、一部は残っている場合
・建物の一部だけを取り壊した場合
・建物の所在や範囲が曖昧な場合 など

 

上記の場合は、残された建物の登記申請などで、建物の図面を正確に出す必要があります。自力でCADを駆使して、1ミリのズレがない状態で図面を作ることは、かなりの労力になるでしょう。
また、過去に複数の建物が建っていたりすると、「いつ、どの登記が終わっている / いない」など、建物の権利関係が複雑な可能性があります。家屋滅失届の提出後、万が一本当は登記されていた建物だったことが発覚してしまうと後から修正することはできないため、慎重に調査する必要があるのです。
土地家屋調査士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
・複雑な建物(過去合体歴がある、複数の建物がある)でも正確に登記状態を調査できる
・解体証明書がないなどの複雑なケースにも対応できる
このような理由から、滅失届の提出を正確に・スピーディーに行いたい方は、土地家屋調査士へ依頼するのがおすすめです。

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5.まとめ

この記事では、「未登記建物の取り壊し」に関する内容をお伝えしてきました。
未登記建物の取り壊し自体は可能ですが、他に建物の所有権を主張する人・相続する人がいない場合に限定されます。
もし所有者がいるにも関わらず勝手に取り壊しをしてしまった場合法的なトラブルになる恐れがあるため、取り壊し前には必ず確認が必要です。
また、未登記建物の取り壊し前〜取り壊し後の具体的な流れや、取り壊しにかかる費用についても解説しました。
具体的な流れ 費用の目安
取り壊し前所有者の有無や建物の登記状況を確認する 0円
取り壊し解体業家に解体を依頼する
30坪で90〜240万円前後
(解体に使える補助金制度あり)
取り壊し後家屋滅失届の提出を行う 0〜5万円程度
取り壊し後は「家屋滅失届」の提出が必要ですが、複雑な取り壊しを行った場合や手続きに自信がない方は専門家である土地家屋調査士へ依頼するのがおすすめです。

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