土地家屋調査士事務所から「筆界確認書」が送られてきて、署名・押印を求められた・・・!
送られてきた「筆界確認書」は、見たこともない書類で文章も難しく、ハンコを押して問題ないのか、不安になるのではないでしょうか。
筆界確認書の取り交わし(署名・押印)は、お隣との土地の境い目について承諾するという重要な行為です。
具体的には、お隣が土地の分筆登記を行うためやお隣が売却前に土地の財産価値を確定させるために使用されます。
しかし、実はそんなに難しい内容ではなく、内容をしっかり理解すれば、筆界確認書に納得して署名・押印に応えることが出来るでしょう。
そこで、この記事では筆界確認書について境界(土地の境い目)の専門家である土地家屋調査士が詳しく分かりやすく説明します。
記事を読み終わって筆界確認書を改めてご覧頂くと、何が書いてあるのか手に取るように分かるはずです。
目次
1 筆界確認書とは
筆界確認書とは、土地とそれに隣接する土地との間の境い目(以下 境界)について承諾する書類です。通常は筆界確認書をもらう前に、土地家屋調査士が立ち会って境界の説明をしてくれます。
では、筆界確認書の意義とそれを承諾することの効力について見て行きましょう。
1-1 筆界確認書の意義
隣接する土地の所有者同士が、次の2点について確認するために作成する書類です。
① 所有する土地の境界について両当事者の認識が一致していること
② 土地の境界について当事者間の争いがないこと
同じものを2つ作成し、両土地の所有者が両方に署名・押印をして、お互いに1つずつを保有します。
(京都土地家屋調査士会HPより引用)
(調査士法1)
確定測量の流れ
参考までに、どのタイミングで筆界確認書が登場するのか説明します。下記は確定測量を行う場合の流れになります。
この場合は、立会いを5のタイミングで、筆界確認書の署名・押印を7のタイミングで行うことになります。
1-2 筆界確認書の効力
筆界確認書に署名・押印することでの承諾は、測量を行った土地の所有者と隣接する土地の所有者の当事者間で有効となります。また、文章の中に、第三者に継承する旨が書かれているときは、一方が土地を売却して所有者が変わっても効力が続くことになります。
境界について承諾を受けたことにより、筆界確認書は次の目的で使用されます。
① 登記
筆界確認書は、登記を行うときに添付書類として使われます。具体的な登記の内容は、地積更正登記※1、分筆登記※2です。この登記には、土地の形状・大きさを示した地積測量図を作成・添付する必要がありますが、隣の土地と接する境界について双方確認していることを証明するため、筆界確認書を添付します。
※1地積更正登記
登記されている土地の面積が誤っており、これを正しい面積に直す登記を地積更正登記と言います。
※2分筆登記
1つの土地を複数の土地に分けることを分筆といい、これを公示するための登記を分筆登記と言います。
② 売却・財産保全
また、筆界確認書は登記以外に使われることもあります。土地の売却や財産保全のために土地の面積を確定させるためです。
筆界確認書の取り交わしまで行うと、境界が合意により確定します。
土地の売却
面積確定により、売却時の価値増加が期待出来ます。
土地の財産保全
面積確定により、将来に残す財産の確定に寄与します。
2 筆界確認書と土地境界図
筆界確認書について見て行きましょう。
弊社の筆界確認書は2枚で構成されています。それぞれ記載内容について説明します。また、境界標が設置されている場所の写真も用意します。これらは、今後に自身の土地を測量する際に、隣接する部分について証明する重要な書類になります。
筆界確認書(表紙)
境界について承諾する書類です。
1枚目(表紙)は土地境界図に記載された境界について承諾する書類です。
前半は測量した土地(以下 本地)の所有者が署名・押印する部分、後半は測量した土地の隣の土地(以下 隣地)の所有者が署名・押印する部分になります。
① 測量した土地
本地の所在が記載されています。
② 境界の承諾・立会い日
図面に記載された境界について承諾した旨、また立会い説明を受けた日が記載されています。
③ 第三者に継承
この境界に関する承諾が、所有者変更の第三者に継承する旨が記載されています。売却後も承諾の効力が存続することになります。
④ 割印(本地)
本地の所有者が割印を押します。書類が2枚に渡りますので割印になります。認印でも可能です。
⑤ 署名・押印(本地)
本地の所有者が署名・押印をします。認印でも可能です。
⑥ 測量した土地の隣の土地
隣地の所在が記載されています。
⑦ 割印(隣地)
隣地の所有者が割印を押します。書類が2枚に渡りますので割印になります。認印でも可能です。
⑧ 署名・押印(隣地)
隣地の所有者が署名・押印をします。認印でも可能です。
筆界確認書(土地境界図)
承諾する境界についての図面です。
1枚目で2枚目(土地境界図)は承諾する境界について記載されています。
⑨ 測量した土地
本地の所在が記載されています。
⑩ 図面の縮尺
⑪ 境界・境界線
1枚目で取り交わす境界が朱書きされています。また、両端の○が境界を示す目印(以下 境界標)になります。
⑫ 境界標の座標・種類
境界標が設置されている位置を座標で示しています。また、設置されている境界標の種類も記載されています。
⑬ 測量等の年月日
測量した年月日、図面を作成した年月日になります。
⑭ 測量会社
測量を行った会社名が記載されています。
3 筆界確認書と立会証明書
筆界確認書とは別に境界について承諾する書類として立会証明書があります。
立会証明書の内容、筆界確認書との違いについて見て行きましょう。
3-1 立会証明書の内容
立会証明書(表紙)
境界について承諾する書類です。
① 測量した土地
本地の所在が記載されています。
② 測量した土地の隣の土地
隣地の所在が記載されています。
③ 境界の承諾・立会い日
図面に記載された境界について承諾した旨が記載されており、また立会い説明を受けた日を記入します。
1枚目(表紙)は土地境界図に記載された境界について承諾する書類です。
④ 署名・押印(隣地)
隣地の所有者が署名・押印をします。認印でも可能です。
立会証明書(土地境界図)
承諾する境界についての図面です。
2枚目(土地境界図)は承諾する境界について記載されています。
⑨ 測量した土地
本地の所在が記載されています。
⑩ 図面の縮尺
⑪ 境界・境界線
1枚目で取り交わす境界が朱書きされています。また、両端の○が境界を示す目印(以下 境界標)になります。
⑫ 境界標の座標・種類
境界標が設置されている位置を座標で示しています。また、設置されている境界標の種類も記載されています。
⑬ 測量等の年月日
測量した年月日、図面を作成した年月日になります。
⑭ 測量会社
測量を行った会社名が記載されています。
3-2 筆界確認書との違い
立会証明書は、境界確認の立会を行い、その境界について確認を行ったことを承諾する書類で、効力は筆界確認書とほぼ同じです。その違いは、立会証明書には一般的に第三者継承の旨の記載がないため、所有者が変わったときは効力が失われる可能性がある点です。
4 筆界確認書は取り交わさなくてはいけないのか
筆界確認書を取り交わさないことも出来ます。実際に断る方もいます。しかし、逆の立場で考えてみましょう。いざ自身が測量を行うことになって、筆界確認書の承諾をもらう側になったとき、昔に署名・押印を断ったために、筆界確認書の承諾をもらえないなんてことになったら困ります。
また、筆界確認書の不足により本地の登記が円滑に進まないなど生じると、今後のご近所トラブルにつながる恐れがあります。
ここはお互い様と考えて、境界確認の立会いと筆界確認書の署名・押印に協力しましょう。
5 まとめ
今回は「筆界確認書」について書き出してみました。
「筆界確認書」は境界について承諾する書類であり、署名・押印により当事者間で有効となること、また登記や売却、財産保全に必要であることが分かりました。署名・押印は境界について承諾する重要な行為ですが、いざ自身がお隣にもらう立場になったときもらえなくなることを考えて、出来る限り協力するようにしましょう。
最後までお読み頂き有難う御座いました!
我々土地家屋調査士法人えんは、思い出の詰まった土地を守り、後世につないでいく、そのような想いを持って日々の業務を行って参ります。ご所有の土地について相談したいことが御座いましたらお気軽にお問合せ下さいませ。