土地家屋調査士と測量士の違いはどこ?両者の視点から徹底解説!

お隣が測量をしていて「土地家屋調査士」という資格を初めて知った。
土地家屋調査士になりたいと思い測量士と何が違うのかを調べたい。
このように思われて検索されたのではないでしょうか?

「測量をする人=測量士」と思われている方が多いのが現状です。
これは人数の違いによることが大きいと思います。
土地家屋調査士の人数は16,000人(2021年)に対して測量士の人数は24万人(2017年)です。

では、土地家屋調査士と測量士の違いは何なのでしょうか?
土地家屋調査士は法務省所管の資格、測量士は国土交通省所管の資格です。
業務の違いで言えば土地家屋調査士は民間業務、測量士は公共業務です。

たとえば、自分の敷地を売却するために「土地境界確定測量」が必要だと言われた方や、分割する土地に「分筆登記」を申請したいと思われている方は土地家屋調査士と測量士どっちに依頼すればいいのでしょうか?

この記事では、業務の違い・所轄官庁・資格の取得方法等の土地家屋調査士と測量士の違い徹底解説しています。

記事を読み終わった時には土地家屋調査士と測量士の違いがわかり、業務を依頼する場合はどちらに依頼すればいいのかまでわかります。

1 土地家屋調査士と測量士の違い

土地家屋調査士と測量士の違いをわかりやすく言えば「民間の測量」が土地家屋調査士、「公共の測量」が測量士です。

同じ測量を業とする資格ですが全く別物と考えてください。
どう違うのかを解説していきます。

1-1 同じ測量の仕事、何が違うのか?

土地家屋調査士と測量士は同じ測量を業としていますが似て非なるものです。大きな違いは下記のとおりです。

土地家屋調査士測量士
資格種類国家資格国家資格
所管省庁法務省国土交通省
主な業務一筆地測量
表示に関する登記
公共測量
個人的な認識境界のプロ測量のプロ
資格取得方法土地家屋調査士試験に合格測量士試験に合格
大学、指定学校を卒業して実務経験(指定学校により年数は違います。)を有する人
主な依頼主一般の土地所有者国、都道府県、区市町村等
業務の目的

土地境界確
表示に関する登記

公共事業に伴う測量業務

1-2  土地家屋調査士とは?

土地家屋調査士とは、法務省所管の国家資格で不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家です。
①不動産の表示に関する登記
②土地の筆界を明らかにする業務の専門家

土地家屋調査士法第1条
第一条 土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とする。

①不動産の表示に関する登記
表示に関する登記とは表題部に関する登記のことを言います。
(土地の全部事項証明書)

土地の表題部には土地の所在・地番・地目・地積が記載されていて、これらが変更(更正)されたときに土地の表示に関する登記を申請します。
(建物の全部事項証明書)

建物の表題部には建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積が記載されていて、これらが変更(更正)されたときに建物の表示に関する登記を申請します。

②土地の筆界を明らかにする業務の専門家
土地家屋調査士法は令和元年6月12日に一部を改正する法律が公布され令和2年8月1日施行されました。

改正前の土地家屋調査士法1条は「土地の筆界を明らかにする業務の専門家」という文言は記載されていませんでした。

改正前の土地家屋調査士法第1条
この法律は、土地家屋調査士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、不動産の表示に関する登記手続の円滑な実施に資し、もつて不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することを目的とする。

改正後に「土地の筆界を明らかにする業務の専門家」という文言が追加されました。この改正によって土地家屋調査士は「境界のプロ」と認められたと言っていいと思います。

1-3 測量士とは?


測量士(測量士補)とは、国土交通省所管の国家資格で技術者として「基本測量(すべての測量の基礎となる測量)」 、「公共測量(国又は地方公共団体の実施する測量)」に従事するために必要な資格です。
測量士は、測量に関する計画を作製し、又は実施する者をいいます。
(公益社団法人日本測量協会ホームページより引用)

測量法第48条
①技術者として基本測量又は公共測量に従事する者は、第四十九条の規定に従い登録された測量士又は測量士補でなければならない。
②測量士は、測量に関する計画を作製し、又は実施する。
③測量士補は、測量士の作製した計画に従い測量に従事する。

測量法第49条
①次条又は第五十一条の規定により測量士又は測量士補となる資格を有する者は、測量士又は測量士補になろうとする場合においては、国土地理院の長に対してその資格を証する書類を添えて、測量士名簿又は測量士補名簿に登録の申請をしなければならない。
②測量士名簿及び測量士補名簿は、国土地理院に備える。

上記測量法のように測量士は公共測量が主の業務となります。
土地家屋調査士が一筆地を主の業務とするのに対し測量士は道路やトンネル等の公共事業を主の業務とします。

土地家屋調査士が「境界のプロ」なら、測量士は「測量のプロ」と言っていいと思います。

2 土地家屋調査士と測量士に聞いた「土地家屋調査士と測量士」

えんグループは、土地家屋調査士法人と測量会社を併設しています。
土地家屋調査士は測量士のことをどう見ているのか?
測量士は土地家屋調査士のことをどう見ているのか?
それぞれに聞いてみました。
会話形式で紹介します。

土地家屋調査士に聞いた測量士とは?
測量士に聞いた土地家屋調査士とは?

匿名男性 えん

土地家屋調査士の立場から見て測量士は?
測量士の立場から見た土地家屋調査士はどのように見ていますか?

一言でいうと「測量のエキスパート」というイメージです。

弁護士 調査士
匿名男性 えん

もう少し詳しくお願いします。

公共事業に基づき、何千何万㎡もの広大な土地を何日もかけて測量して得た膨大な量のデータをミリ単位で管理し、図化する。建設コンサルタントなどの業務にも付随して、開発などの都市計画も行っているイメージです。

弁護士 調査士
匿名男性 えん

測量士から見た土地家屋調査士はどうですか?

測量の専門家というイメージではなく、土地・建物などの登記に関する専門家というイメージです。

会社員 測量士
匿名男性 えん

もう少し詳しくお願いします。

申請土地依頼者と依頼者のお隣さん(隣接する土地の所有者)との意見を聞き中立な存在。
存続図面(法務局にある地積測量図や過去に測量した図面等)があれば、境界と思われるものは、根拠とし許可あれば、地中の中まで探すなど調査を限りなくおこなっている。
地元密着で司法書士や税理士と連携している。
大きな会社というイメージはなく個人商店である。

会社員 測量士
匿名男性 えん

ほかに思いつくイメージはないですか?

作業車、カラーコーン、ヘルメット、反射材付きの作業服、トータルステーション、レベル、安全靴、小さい黒板にチョークで作業報告を写真で撮るなどのとにかく、現場作業のイメージで、現地から帰ってくると、ひたすら図面作成作業と向き合い、夜遅くまで図面ができるまで帰らないというイメージ。そして、出来上がった図面は精密で、現地の細かい構造物が全て描かれている。
とにかく、現況がどうなっているかを図化することにはたけているが、筆界について、不動産登記についての専門家ではないです。

弁護士 調査士

土地家屋調査士は近隣との折衝に長けているイメージです。業務の内容が一筆地の確定が多いので測量士に比べると話術が必要とされると思います。また、登記手続きのための不動産登記法や民法にも精通していると感じます。

会社員 測量士

これは個人的な意見ですが、測量精度では測量士の方が一つ上のような気がします。
当然、我々土地家屋調査士も精度には注意して測量していますが、測量士は基本測量や公共測量という部門を手掛けているのでそのように感じます。

弁護士 調査士
匿名男性 えん

では、測量に関しては「測量士」が上と言っていいのでしょうか?

取り扱う内容が異なるのでどちらが上でどちらが下というのは決められません。
我々測量士は「測量」に関しては自信をもってやっていますが、やはり境界に関しては土地家屋調査士の細かさには勝てないかもしれません。

会社員 測量士

そうですね上下をつけるものではないと思います。お互い分野が異なりますからね。
土地家屋調査士も測量士も顧客のために日々研鑽をしていかなければなりません。

弁護士 調査士

 

測量技術は常に進歩していますので勉強していきます。

会社員 測量士
匿名男性 測量士

ありがとうございました。

 

3 土地家屋調査士と測量士の資格取得方法の違いは?


土地家屋調査士と測量士は管轄所管が異なるので当然試験も異なります。
それぞれの資格取得方法について解説します。

3-1 土地家屋調査士の取得方法

土地家屋調査士になるための方法は2つあります。
①年に1回法務省が行う土地家屋調査士試験に合格する。
②法務局で実務経験をし、法務大臣の認定を受ける。

通常は①の土地家屋調査士試験に合格し土地家屋調査士になります。
試験は毎年10月に開催され午前と午後の試験となります。
午前は測量に関する試験で測量士、測量士補、1級建築士、2級建築士の資格を持っているものは免除されます。

試験の詳細は「令和3年度土地家屋調査士試験受験案内」をご参照ください。

3-2 測量士の取得方法

測量士の取得方法は大きく分けて2つあります。
①年に1回国土交通省が行う測量士試験に合格する。
②指定学校を卒業して実務経験により取得する。

測量士の多くは②の指定学校を卒業して実務経験により資格を取得しています。
指定学校に関する詳細は「公益社団法人日本測量協会のHP」をご参照ください。

①の試験については、毎年5月に開催されます。
試験の詳細は「国土交通省国土地理院のHP」をご参照ください。

4 まとめ

土地家屋調査士と測量士の違いについて解説してきました。

私個人のイメージは土地家屋調査士は「境界のプロ」測量士は「測量のプロ」です。
大きな違いは下図のとおりです。

土地家屋調査士 測量士
資格種類国家資格国家資格
所管省庁 法務省国土交通省
主な業務 一筆地測量
表示に関する登記
公共測量
個人的な認識 境界のプロ測量のプロ
資格取得方法土地家屋調査士試験に合格測量士試験に合格
大学、指定学校を卒業して実務経験(指定学校により年数は違います。)を有する人
主な依頼主一般の土地所有者国、都道府県、区市町村等
業務の目的土地境界確定
表示に関する登記
公共事業に伴う測量業務

土地家屋調査士と測量士は同じ測量を業としていますが完全に別物であり似て非なるものです。

皆さんの周りで測量をしている人がいたら「土地家屋調査士」なのか「測量士」なのかと観察してみるのも面白いのではないでしょうか。

この記事が皆さんの大切な不動産を安心・安全な価値にする一助になれば幸いです。

コメント

「土地家屋調査士と測量士の違いはどこ?両者の視点から徹底解説!」に対する2件のコメント

  1. 確定測量の立会に立ち会う予定ですが、立会を開催する側の資格は測量士ですか、土地家屋調査士ですか、誰が実際に説明されるのですか。立会時に資格の提示はありますかご教示ください。

    1. 野村様
      ご返信お待たせ致しました。土地家屋調査士法人えんの川本と申します。
      開催する側の資格は、測量士の場合もあれば、土地家屋調査士の場合もあります。
      測量士や土地家屋調査士のほかに、指示のもとスタッフが説明する場合もあります。
      立会時の資格提示は義務化にもなっていないため、通常しないことの方が多いと思います。
      以上、ご参考にしていただければ幸いです。宜しくお願い致します。

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