土地の価値を高めるための境界確定のすすめ

 

お隣が測量をしていて、境界(筆界)の立会いを求められたことありませんか?

国土交通省の調査結果では2020年全国での土地取引件数は140万件を超える件数だそうです。

昔は登記簿に記載されている面積で取引されることがほとんどでしたが、現在では正確な面積での取引となっています。土地の値段は高くなっていて都内の一等地では1センチでも相当な金額なります。現在は隣接地としっかり境界確認を実施してからの取引が主流となっています。

1 境界(筆界)確定とは

ブロックなどで隣と仕切られているのでブロックが境界(筆界)と思われている方も多いのではないでしょうか。
それは「所有権の境」で境界(正式には筆界)とは似て非なるものなのです。

「安心・安全」な不動産を手に入れる境界確定、土地の価値を高める境界確定について解説していきます。

1-1 境界(筆界)確定とは何か?           

境界(筆界)確定とは、正式には筆界(ひっかい)確定と言い、簡潔に言えば自分の敷地の境はどこかを明確にする作業です。

一般的に境界と呼ばれていますが境界には大きく分けて2種類あり一つは自分の土地の正式な境である「筆界(ひっかい)」ロック塀などでお互いに認識している境である「所有権界です。

境界(筆界)確定とは、自分の土地の正式な境を明確にする作業を言います。

「筆界」とは,公法上の線と呼ばれ、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり,所有者同士の合意などによって変更することはできません。
筆界確定は、この目に見えない線(公法上の線)を様々な資料に基づいて明確にする作業を言います。

では、境界(筆界)確定する効果をご紹介したいと思います。

1-2 境界(筆界)確定の効果

          
境界(筆界)確定の効果についてですが、その効果は、隣接地との争いにならない安心・安全な土地になります。
多くの方が、自分の土地の境にはブロック塀があるから境は決まっていると思われています。ブロック塀はお互いが決めた線に沿って構築されていることもあり、お互いが話し合いなどで決めた境界は「所有権界」といいます。

「所有権界」を「筆界」と誤認されている方が非常に多いのが現状です。
「時効取得」という言葉を聞いたことがないでしょうか?

時効取得とは、他人の土地や不動産を、所有する意思を持って一定期間占有した場合に、時効により所有権を得ることができる制度のことです。占有を開始した当初は実質的な所有者でなくても、長期間占有していることによって、自身が所有者になれるということです。
もし本来の境界(筆界)と異なり自分の土地に間違ってブロックが積まれていて一定期間経っていた場合、本来の境界(筆界)とブロックとの間の土地が時効取得によりお隣の土地になってしまうこともあり得ます。境界(筆界)確定は、土地の筆界を明らかにしていくなかで、所有権界や占有についても誤りが判明し、時効取得されることを防止できる場合もあります。

また相続等でお子様に土地を分けてお渡ししたい場合、境界(筆界)が確定していれば「分筆登記(ぶんぴつとうき)」ができます。もし、土地の境界(筆界)が確定していなければ、分筆登記をすぐに行うことはできません。

その他としては土地を売却する場合も現在は境界(筆界)を確定させることが通常です。境界(筆界)確定がされていれば土地の価値が高まると考えられますが、この場合で問題になるのはお隣の方が境界(筆界)の位置をご了承してくれない場合も考えられ、その場合は、売却金額が下がる場合もあり得ます。


このように境界(筆界)が確定していることはメリットは多くありますが、デメリット(費用負担等は除く)は一般的には考えにくいです。

では、実際にどうやって境界(筆界)確定をやるのかをご紹介したいと思います。

2 境界(筆界)確定を実施する手順         

上記写真はトータルステーションという測量機です。
角度と距離を同時に計測可能な高精度の測量機です。

土地の境界(筆界)確定をするには境界確定測量を行います。
確定測量の手順は基本的には下記の流れとなります。

詳細は下記のとおりです。

①資料調査
法務局や区市区町村の役所に保管されている図面等の調査を行います。
この調査が境界(筆界)を明らかにする基礎となります。

②測量
トータルステーションを使用し現地の測量を行います。
測量を行う事前作業として境界標の探索も行います。

境界標には様々な種類があります。
こんなの見たことないでしょうか?

コンクリート杭
金属プレート

                              
この他にも金属鋲・御影石・プラスチック杭などもあります。

③計算
現地で測ってきたデーターを計算していきます。
この時に1の資料調査で取得した資料を基に境界(筆界)を明らかにします。

④仮のポイント設置
3で求めた境界(筆界)点を現地にペンキ等で表示します。
あくまでも仮なのでペンキ等になります。

⑤境界(筆界)立会い
境界(筆界)は自分だけのものではなくお隣も関係してきます。
1-1で書きましたが境界(筆界)は公法上の線で既に決まっている線です。
それならお隣と立会いをする必要はないのではないかを思われると思います。
しかし、実務上はお隣と立会いをして境界(筆界)の位置を確認することになっています。

⑥境界標設置
立会い終了後、仮でつけていたポイントに正式な境界標を設置します。
この時に設置する境界標は現地の状況によって設置されます。
土でコンクリート杭が設置できる場合はコンクリート杭
ブロック等の上になる場合は金属プレート

⑦筆界確認書の取り交わし
立会いも終わり境界標の設置が完了したら筆界確認書を作成し自分とお隣と双方取り交わしで筆界確認書の取り交わしを行います。
この筆界確認書は筆界確認書、図面、写真が編綴されてわかりやすいものとなっています。

⑧成果納品
1~7の業務が終了したら境界(筆界)確定は終了です。
測量成果簿に成果一式をまとめて納品します。

では、これらの業務を行った場合の費用はどのくらいか?をご紹介します。

3 境界(筆界)確定の費用            

先ずは一般的な費用感をお伝えします。

条件1:隣接道路が公道で道路境界(筆界)確定済の場合・・・40万円~60万円
条件2:隣接道路が公道で道路境界(筆界)未確定の場合・・・60万円~80万円
条件3:隣接道路が私道で道路所有者が少数の場合   ・・・45万円~65万円
条件4:隣接道路が私道で道路所有者が多数の場合   ・・・60万円~

境界確定の費用は大きく分けると以下の5つで決まります。

①土地の面積
②隣接地の数
③境界(筆界)点数
④隣接道路の種別
⑤隣接道路の確定の有無

では、一つずつ解説したいと思います。

①土地の面積
正確な面積は確定測量をやらないとわかりませんので登記簿上の面積で計算され、広いと金額が増加します。

②隣接地の数
 お隣と何件接しているかで計算され、件数が多いと金額が増加します。
 境界(筆界)確定はお隣との境界(筆界)立会いを行いますので隣接の数によって費用が変わってきます。

③境界(筆界)点数
      
上記図は境界点数が4点です。
測量計算、境界(筆界)立会い、境界標設置等で作業量が増えますので費用も変わってきます。

④ 隣接道路の種別
⑤ 隣接道路の確定の有無
道路には大きく分けると2つの種別があります。
・公道(国、都道府県、区市区町村の道路)
・個人所有の道路(位置指定道路、但し書き道路、協定通路等)

公道は道路境界が既に確定しているかいないかにより費用がだいぶ変わってきます。
道路境界が確定していない場合は行政に確定の申請を行い確定する作業となりますので時間も費用もかかることになります。

道路も隣接地となりますので境界(筆界)の立会いが必要となりますので道路種別によって費用が変わってきます。
個人所有の道路で共有者が何十名といる場合もあります。
このような場合は費用がかなり高くなってしまいます。

御見積書は下記のような様式になります。

      

4 境界(筆界)確定に必要な期間

           

実際に境界(筆界)確定を行う場合はどれくらいの期間がかかるのでしょうか?
これもケースによって異なりますので、いくつかケースをご紹介します。

一般的な事例

事例1:道路種別が公道(確定済)で隣接地の数が4件くらいの場合 1カ月半~2カ月
事例2:道路種別が公道(未確定)で隣接地の数が4件くらいの場合 3カ月~5カ月
事例3:道路種別が私道(所有者が少数)で隣接地の数が4件くらいの場合 1カ月半~2カ月
事例4:道路種別が私道(所有者が多数)で隣接地の数が4件くらいの場合 3カ月~

 

一般的な日数は上記となりますが日数の変動要因をご紹介します。

要因1:公道の場合でその道路が国道なのか、都道府県道なのか、区市区町村道なのかこれによっても日数が変わります。
要因2:隣接地(私道含む)の方が現地に住んでいない場合。遠方に住んでいる(海外の時もあります)場合や施設に入られている場合などは相当な時間がかかる場合もあります。
要因3:私道の場合で所有者が多数の場合。私道の場合で所有者が何十名という場合があります。このような場合でも人 を探すのに時間がかかったり、立会いの調整に時間がかかったりします。
要因4:その他私道の場合は曽祖父の名義のままで相続人の特定に時間がかかったりする場合もあります。

5 境界(筆界)確定を依頼する業者の選び方       

5-1 境界(筆界)確定の依頼先

確定測量は「土地家屋調査士」に依頼してください。

「測量」を仕事にしている者に2つの資格があるのはご存じでしょうか?
一つは「土地家屋調査士」もう一つは「測量士」です。

なぜ「土地家屋調査士」に依頼するのかですが、「土地家屋調査士」は下記土地家屋調査士法第1条で土地の境界(筆界)を明らかにする業務の専門家と位置づけられています。

土地家屋調査士法 第1条
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とする。

土地家屋調査士事務所も多数あります。
その中でどこを選べばいいのか?いくつかポイントをご紹介します。

5-2 土地家屋調査士の選び方


①相談やお見積りの段階から親身になってくれるか。
②見積りの内訳をしっかり説明できるか。
③仕事内容の説明やリスクについて説明してくれるか。
④現場対応を土地家屋調査士がやってくれるのか。
(土地家屋調査士は会員証を携帯しています。)
⑤世界測地系(※1)で対応してくれるか。
※1 国土地理院HP参照(https://www.gsi.go.jp/KIDS/KIDS13.html)
⑥契約書(委・受託書、注文書)を発行してくれるか。

6 境界(筆界)確定の注意点

境界(筆界)は公法上の線と呼ばれていて既に決まっている線ですが実際には見えません。
様々に資料を基に測量をして境界(筆界)を明らかにしていきます。

その境界(筆界)を明らかにして隣接地と立会いをして境界(筆界)を確定させていきますが隣接地の方も色々な方がいるのも事実です。
下記のようなケースが考えられます。

ケース1:人間関係がうまくいっていない
ケース2:境界(筆界)に納得がいかない
ケース3:立会いをしたくない
ケース4:署名・捺印をしたくない

等々色々な理由で境界(筆界)確認を拒む方もいます。

では、このような場合、境界(筆界)が決まらないのか?
答えは決まらない場合もあります。

しかし、筆界確定制度(※1)や境界確定訴訟(※2)といった制度を利用して決めることも可能です。
ただ、これらの制度を利用して境界を決めるには時間も費用もかかってしまします。

業務を依頼される理由のほとんどが「売買」や「相続」です。
このような場合は時間的な制約があるため境界(筆界)を確定させられない場合もあります。

※1 筆界特定制度とは,土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて,筆界特定登記官が,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。

※2境界確定訴訟とは、隣接する土地の筆界の位置に争いがある場合に、判決により筆界を確定することを求めて訴訟を起こすことです。

7 まとめ

 

不動産は財産の中で最も高価なものであり、家族の思い出がつまった大切なものであり
それを「安心・安全」なものにするのが境界(筆界)確定です。
「売買」や「相続」が発生してからやるのでは価値が半減してしまうこともあり得ます。

皆様の大切な不動産を守れる一助となれれば幸いです。

土地家屋調査士に相談して
問題を解決

土地家屋調査士法人えん公式ブログをお読みいただき、問題は解決されましたか?

まだ解決しない場合は土地家屋調査士へご相談された方が良い可能性があります。
ご相談は無料です。

お気軽に土地家屋調査士法人えん
までお問い合わせください

土地家屋調査士に相談して問題を解決

年間 2,215件の相談件数は業界トップクラス

安心安全な不動産への相談は、土地家屋調査士へ。

※土地に関するご相談は複雑なケースが多く、実際に状況(書類など)を確認しないことにはお答えが難しいので、お電話ではなくご面談にて回答させていただきます。予めご了承ください。

建物・土地の登記、測量についての
お悩み、ご相談など
お気軽にお問い合わせください

当事務所へのお問い合わせは、お電話またはWEBから承ります。
通常、フォームからのお問い合わせは2営業日以内にご返信させていただきますが、
お問い合わせ内容によっては回答に時間を頂戴する場合もございますので予めご了承くださいませ。

※土地に関するご相談は複雑なケースが多く、実際に状況(書類など)を確認しないことには
お答えが難しいので、お電話ではなくご面談にて回答させていただきます。予めご了承ください。

-お電話でのお問い合わせはこちら-
-WEBからのお問い合わせはこちら-
お問い合わせフォーム
【関東対応】不動産の悩み・問題を解決
年間1000件以上の相談を受ける土地家屋調査士

【関東対応】不動産の悩み・問題を解決
年間1000件以上の相談を受ける土地家屋調査士