
「亡くなった父の家を相続することになった。ところが、登記簿を調べたら建物が載っていない……」 「固定資産税は毎年払っているのに、どうして”未登記”なの?」 「このまま放っておいたら、いつか家族が困るのだろうか」
目の前に確かに家が建っているのに、登記事項証明書(いわゆる”謄本”)を取ろうとしても建物が出てこない。
この状況に直面すると、多くの方が一瞬で不安になります。
ただ、最初にお伝えしたいのはここです。 未登記=違法、未登記=即アウト、ではありません。
問題は「未登記という状態が、売却・融資・相続手続きを止める原因になり得る」こと。 そして、放置すればするほど”立証”が難しくなり、解決コストが上がることです。
この記事では、土地家屋調査士法人えんが、未登記建物の代表的なリスク、解決の手順(表題登記)、資料がない場合の突破口までを、実務目線でわかりやすく整理します。
目次
1. まず最初に確認:それは本当に「未登記建物」か?

相続人が最もつまずくのがここです。
まずは落ち着いて、次の2パターンを切り分けてください。
パターンA:建物そのものが未登記(完全未登記)→ 建物の登記事項証明書が存在しない(家屋番号がない)。
- パターンB:母屋は登記済みだが、増築部分の登記が漏れている(一部未登記) → 本当は「建物表題部変更登記(床面積変更等)」が必要。
増築部分の未登記について詳しくお知りになりたい方は 増築未登記の中古戸建のリスクとその解消方法を土地家屋調査士が解説
確認の近道は、手元の固定資産税の課税明細書です。
家屋番号欄が空欄だったり、「未登記」と記載されていたりする場合、それは未登記家屋です。
2. なぜ今、未登記建物の相談が増えているのか

背景には、2024年(令和6年)4月から始まった相続登記の申請義務化があります。
相続で不動産を取得した相続人は、原則として”知った日から3年以内”に相続登記申請が必要となり、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象となり得ます。
この流れで「とりあえず実家の登記を確認しよう」と法務局で書類を取り寄せたところ、「土地は出るのに建物が出ない=未登記が発覚」というケースが急増しています。
未登記建物を相続した際の手続きや流れについて詳しくお知りになりたい方は 未登記建物を相続したら何をする?やるべきこと【3ステップ】を解説
※重要: 建物が未登記だと、そもそも”相続登記(権利部の移転登記)”ができません。先に「建物表題登記」等で”登記の器(表題部)”を作る必要があります。
3. 「税金を払っている=登記済み」という最大の誤解

「税金を払っているのに登記がないなんてありえるの?」 この疑問はもっともですが、制度上起こり得ます。
- 固定資産税(役所): 賦課期日(1月1日)の現況に基づき、建物があれば課税します。
- 不動産登記(法務局): 所有者からの申請主義が原則です。申請がなければ記録されません。
つまり、よくあるのがこの状態です。
「役所は建物を把握して課税しているが、法務局には届出がない」 これは矛盾ではなく、実務では頻繁に起きている現象です。
4. 放置は厳禁。未登記建物が招く5つのリスク

リスク①:売却・活用の選択肢が一気に狭まる
未登記のままだと、買主側が住宅ローンを使う取引では支障が出やすく、仲介会社・買主・金融機関の審査が厳しくなりがちです。
結果として「売れない」、より正確には”現金客にしか売れない/買い叩かれる/時間がかかる”方向に振れます。
未登記建物の売買のリスクや対策について詳しくお知りになりたい方は 未登記建物を売買する時の問題点と対策について|登記の進め方も解説
リスク②:住宅ローン・リフォームローンが通りにくい
融資は、担保設定・権利関係の明確化が前提になることが多く、未登記の建物は圧倒的に不利です。
「リフォームしたいのに資金調達ができない」という詰まり方をします。
リスク③:法律上は「表題登記の義務」と「過料」の規定がある
建物を新築した場合や、未登記建物を取得した場合、原則として所有権取得日から1か月以内に表題登記申請が必要とされています。
また、申請を怠ったとき10万円以下の過料に処せられる可能性がある、と法律で定められています。
リスク④:親族間の遺産分割協議がこじれやすい
未登記だと、遺産分割協議書での特定や、「誰が建てたのか/増築部分は誰の資金か」の説明が難しくなります。疑念が生まれると、協議は一気に泥沼化します。
リスク⑤:時間が経つほど”立証”が困難になり、解決コストが上がる
登記は「言ったもん勝ち」ではなく、疎明(資料の積み上げ)が鍵になります。 放置するほど、建築時資料は散逸し、関係者は高齢化し、工務店も廃業しがちです。
解決そのものが不可能というより、”難易度が上がって費用と期間が伸びる”のが現実です。
5. 解決の鍵は「建物表題登記」

未登記建物を登記上の記録に載せる第一歩が「建物表題登記(たてものひょうだいとうき)」です。
これは、建物の所在・種類・構造・床面積などを登記記録の表題部に記載する手続きです。
その後、必要に応じて司法書士に依頼して「所有権保存登記」を行うことで、権利関係(権利部)まで整います。
表題登記は、土地家屋調査士の独占業務です。
測量から申請までを一貫してサポートします。
6. 【ロードマップ】未登記建物を解決する5ステップ

現状把握から登記完了まで
- STEP1:現状の棚卸し(建物の特定) 固定資産税の課税明細書で家屋番号の有無を確認。「母屋未登記」なのか「増築未登記」なのかを切り分けます。
- STEP2:資料収集(”所有”と”時期”の裏付け) 建築確認済証、検査済証、工事請負契約書、領収書、引渡証明書などを探します。古い火災保険証券や住宅ローン関係書類も有効です。
- STEP3:現地調査・測量/図面作成 土地家屋調査士が現地で外周測量、各階平面図作成、床面積算定などを行い、登記申請に必要な図面を整えます。
- STEP4:疎明資料の組み立て(資料が薄いほどここが勝負) 資料が不足する場合は、次章の「代替証拠」を積み上げ、登記官の調査・判断に耐える形で整えます。
- STEP5:表題登記完了 → 次の手続へ 表題登記が完了し、家屋番号が付いたら、所有権保存登記(司法書士)、土地・建物の相続登記、売却・融資の実行へと進みます。
未登記建物の表題登記の具体的な手順について詳しくお知りになりたい方は 未登記建物を相続した!表題登記手続き6stepを徹底解説
7. 建築時の資料が何もないときの突破口(代替証拠の積み上げ)
「確認済証も領収書もない。もう無理ですよね?」ここで諦める方が多いのですが、実務は”ゼロか100か”ではありません。
たとえば、未登記家屋であっても自治体が課税台帳等で把握している事実は、登記の疎明資料としても「補強材料」になり得ます。
よく使う代替証拠(例):
- 固定資産税の課税資料(課税明細、名寄帳、評価証明書)
- 固定資産税の納税証明書(通常直近3年分程度)
- 建築概要書、台帳記載事項証明書
- ライフライン利用証明(電気・ガス・水道の明細書)
- 火災保険加入履歴
- 工事店の証明(もし存続していれば)
- 関係者の具体的な記憶の整理 → 上申書等で書面化
ポイントは「証拠がない」ではなく、”証拠の形が違うだけ”という発想です。
断片を組み合わせて、筋の通ったストーリー(法的な所有権の証明)にするのが、私たち専門家の仕事になります。
8. まとめ:登記は、家族を守る”最後の盾”になる

未登記建物は、今日明日に家が崩れるわけではありません。
しかし、放置すると「売れない」「貸せない」「直せない」「揉める」の種になり、ご家族の将来を縛り付けます。
登記を整えることは、曖昧な過去に区切りをつけ、将来の選択肢(売却・融資・相続)を守るための前向きな投資です。
「資料がない」「関係者が多い」「いつまでに売りたい」など、事情は案件ごとに違います。
だからこそ、早い段階でプロに相談し、最短ルートを設計することが、結果的にいちばん安く、そして早く解決する方法です。
まずは一度、土地家屋調査士法人えんにご相談ください。
あなたの実家を「負動産」にしないために、私たちが全力でサポートします。



