
「実家を相続したが、誰も住む予定がなく空き家になっている」 「遠方にあるため管理が行き届かず、近所からクレームが来ないか心配だ」 「処分したいが、家の名義も境界もあやふやで、どこから手をつければいいか分からない」
今、日本中でこのような「空き家」に関する悲鳴が上がっています。
2024年4月から相続登記は義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく期限を過ぎると過料の対象となる可能性があります(2024年4月1日より前の相続についても、2027年3月31日までの経過措置があります)。
そして「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」の改正により、行政の目はかつてないほど厳しくなっています。
もはや「とりあえず放置」は許されない時代が到来しました。
しかし、多くの方が誤解されています。
空き家問題の解決とは、単に「解体業者が壊して終わり」あるいは「不動産屋が売って終わり」ではありません。
その前段階にある、最も根源的な問題、すなわち「土地・建物の登記(表示)の整合」と「筆界(境界)の確認・境界標の保全」をクリアしなければ、売ることも、貸すことも、壊すことさえもスムーズには進まない可能性があります。
今回は、空き家という「負の遺産」になりかねない資産を、測量と登記の力で「活きる資産」へと再生させるために、私たち土地家屋調査士がどのような役割を果たすのか、その全貌を解説します。
目次
1. なぜ「空き家」は売れないのか? 荒廃した現場の現実

「安くてもいいから売りたい」 そう不動産会社に相談しても、「このままでは扱えません」と断られてしまうケースが後を絶ちません。
なぜでしょうか?
それは、空き家特有の「不明瞭さ」が、買主にとって最大のリスクとなるからです。
境界標が見つからない、お隣が誰かわからない
長年放置された空き家の庭は、雑草や樹木が生い茂り、ジャングルのようになっています。
かつて存在したはずの「境界標(杭)」は土に埋もれ、あるいはブロック塀の傾きによって位置がズレてしまっています。
「お隣との境目は、昔植えたあの柿の木だ」といった親の記憶も、代替わりした隣人には通用しません。
筆界が未確認の土地は、買主にとって大きな不安材料になります。
公簿面積で契約すること(公簿売買)もありますが、融資・価格交渉・引渡し後のトラブル防止の観点から、実測面積や確定測量図の提示を求められることが多いのが実情です。
「未登記の増築部分」が売買の足を引っ張る
古い空き家でよくあるのが、建物の現況が登記(表題部)に反映されていないケースです。
たとえば、増築したのに建物表題部の変更登記がされていない、あるいは「離れ」「物置小屋」など別棟を建てたのに建物表題登記がされていない、といった例です。
現況と登記が一致しないと、買主側の融資審査や売買手続で説明が求められ、取引が停滞することがあります。
表示に関する登記には申請義務が定められているため、売却・解体・相続整理を円滑に進めるためにも、状況に応じて表示登記の整理(建物表題登記/建物表題部変更登記など)を行うことが重要です。
2. いきなり解体は絶対NG! 固定資産税と境界のリスク

「建物が古くてボロボロだから、先に解体して更地にしよう」 これは、空き家対策において最も陥りやすい罠です。
専門家の助言なしに解体に踏み切ると、経済的に大損害を被る可能性があります。
建物がなくなると土地の税金が6倍になる?
土地にかかる固定資産税には、「住宅用地の特例」という減税措置があります。
土地の上に家が建っていれば、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1となる扱いがあります。
しかし、解体して更地にしてしまうと、この特例が外れ、(200㎡以下の部分について)課税標準が最大6倍相当となり、税負担が増える可能性があります(実際の増額幅は評価額や負担調整等により変動します)。
もし更地にした直後に売れれば良いですが、売却が長引けば、毎年高額な税金を払い続ける「金食い虫」になってしまいます。
「いつ解体するか(賦課期日である1月1日をどうまたぐか)」の戦略は、非常に重要なのです。
解体工事で「境界の証拠」ごと破壊してしまう悲劇
もう一つのリスクは、物理的な「境界の消失」です。
古家の基礎や外塀は、長年の暮らしの中で境界を示す重要な「証拠」となっている場合があります。
測量を行わずに重機を入れて解体してしまうと、これらの証拠ごと破壊してしまい、後になって「ここが境界だったはずだ」と主張しても、証明する術がなくなってしまいます。
特に、お隣の塀と密着しているような現場では、解体時の振動で隣の壁にヒビが入るなどのトラブルも頻発します。
だからこそ、「解体する前に測量(あるいは現況の保全)」が必要なのです。
3. 「3,000万円特別控除」を勝ち取るための測量戦略

空き家を売却する際、絶対に活用したいのが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
以下、一般的な情報として提供いたします。
(詳しい内容につきましては、税理士に相談するか
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
こちらの国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)を参照してください。)
いわゆる『空き家特例とは』
一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円が控除されるものです。
相続空き家の特例を使うための厳しい期限と条件
この特例を使う主な要件は以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(旧耐震基準)。
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
- 譲渡の時までに耐震リフォームをするか、あるいは「取壊し等(解体)」を行うこと。 (※譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に一定の耐震基準を満たすこととなった場合は要件を満たします。 また、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に家屋の全部の取壊し等を行った場合も要件を満たします。 この「譲渡後の取壊し等」は令和6年1月1日以後の譲渡が対象です。)
- 区分所有建物登記がされている建物(マンション等)でないこと。
- 相続開始直前に、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと(老人ホーム入所等の例外あり)。
- 相続の時から譲渡の時まで、事業用・貸付用・居住用として使用していないこと。
- 売却代金が1億円以下であること。
- 令和6年1月1日以後に行う譲渡で、相続人の数が3人以上の場合は控除額の上限が2,000万円となること。
現実的に、古い空き家に耐震リフォームをして売るのはコストが合わないことも多く、結果として「解体して更地渡し」を選択するケースが目立ちます。
耐震基準を満たさない古家は「更地渡し」が現実的になりやすい
ここで重要になるのがスケジュール管理です。
特例の期限内に譲渡するには、境界確定測量、解体工事、建物滅失登記、区分建物合併登記などを計画的に進め、売買の決済・引渡し(譲渡)まで到達する必要があります(通常は同日に所有権移転登記も行います)。
これらをバラバラに手配していては、間に合わないこともあります。
土地家屋調査士は、測量と並行して解体後の滅失登記の準備を進めます。
この「段取り力」こそが、特例の適用を実現する鍵となります。
4. 近隣トラブルの防波堤として──土地家屋調査士の交渉術

空き家問題の核心は、実は「建物」ではなく「人間関係」にあります。
長期間放置された空き家は、近隣住民にとって「迷惑施設」以外の何物でもありません。
怒れる隣人、行方不明の所有者……複雑な人間関係
「お宅の木の枝が越境してきて迷惑している」 「野良猫が住み着いて臭い」 「台風で瓦が飛んできたらどうするんだ」
いざ売却のために測量をしようと挨拶に行くと、長年の鬱憤が爆発し、厳しい言葉を投げかけられることが多々あります。
また、お隣自身も高齢で施設に入っていたり、相続が発生して連絡がつかなくなっていたりと、一筋縄ではいきません。
このような状況で、相続人である皆様が直接交渉するのは精神的に大きな負担となります。
私たち土地家屋調査士は、第三者的な立場の専門家として間に入ります。
「ご迷惑をおかけしております。この度、責任を持って処分するために、まずは境界をはっきりさせたいのです」 と誠意を持って説明し、測量業務を通じて近隣との関係修復を図ります。
近隣にご挨拶するのは面倒かもしれませんが、測量を開始する前に所有者の方からもご挨拶をすることは非常に重要です。
境界確認のハンコをもらうことは、単なる事務作業ではなく、「近隣住民の安心を取り戻すプロセス」でもあるのです。
草木が生い茂る現場での境界確定テクニック
物理的にも、空き家の測量は困難を極めます。
腰まで伸びた雑草、不法投棄されたゴミ、崩れかけたブロック塀。
私たち「えん」のチームは、必要であれば草刈りから行い、土に埋もれた境界標を探索します。 *伐採作業の手配をお願いする場合もございます。
また、建物内部に残された家財道具(残置物)の撤去業者とも連携し、売却可能な状態へと現場を整えます。
机上の計算だけでなく、泥にまみれて現場を動かす。
それが空き家測量のリアルです。
5. 土地家屋調査士法人えんのワンストップ・ソリューション

空き家問題は、測量だけで解決するものではありません。 解体、登記、税務、そして売却。
これら全てのピースが噛み合って初めて解決します。
一般的には、
- 境界確定・建物滅失登記・建物増築登記・未登記は土地家屋調査士へ
- 相続登記は司法書士へ
- 解体は解体業者へ
- 税金は税理士へ
売却は不動産屋へと、お客様ご自身が各所に連絡し、調整しなければなりません。
これは慣れない方にとっては途方もない労力です。
解体・測量・登記・税務のトータルコーディネート
土地家屋調査士法人えんは、これらの専門家ネットワークの中心に立ちます。
【えんの空き家再生スキーム】
- 現況調査・資料調査: 公図や登記簿を精査し、問題点を洗い出す。
- 境界確定測量: 近隣と交渉し、境界を確定させる(売却の前提条件クリア)。
- 解体プランの策定: 税金の特例や固定資産税への影響を考慮し、最適な解体時期をアドバイス。
- 建物滅失登記・地積更正登記: 建物を消し、土地の正しい面積を登記簿に反映させる。
- 売却サポート: 確定測量図付きの「商品力の高い土地」として、提携不動産会社へ橋渡し。
お客様は、私たちの窓口一つにご相談いただくだけで、複雑なパズルを解くことができます。
放置リスクを回避し、資産価値を最大化する提案
もし、「今はまだ売りたくない」という場合でも、ご相談ください。
境界標の保全や、未登記建物の整理を行っておくだけで、将来のリスクは大幅に軽減されます。
また、2024年4月から相続登記は義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく期限を過ぎると過料の対象となる可能性があります(2024年4月1日より前の相続についても、2027年3月31日までの経過措置があります)。
「とりあえず、今の法的な状態がどうなっているか知りたい」という診断だけでも、大きな価値があります。
6. まとめ:空き家対策は「測る」ことから始まる

誰も住まなくなった家。
そこには、かつての家族の思い出が詰まっていると同時に、放置すればするほど膨らむ「リスク」も詰まっています。
「特定空家等」や「管理不全空家等」に該当し、自治体から勧告を受けると、住宅用地特例の適用対象から除外され、固定資産税の負担が増える可能性があります。
さらに命令に従わない場合、行政代執行に至ることもあります。
そうなる前に、手を打たなければなりません。
暗い部屋に明かりを灯すように、不明瞭な土地に「境界」という光を当てること。
それが、解決への第一歩です。
測量図が出来上がった時、それはもはや「不気味な空き家」ではなく、「市場価値のある優良な宅地」へと生まれ変わります。
その変化を起こすことができるのは、現場を知り、法を知る土地家屋調査士だけです。
「実家の処分に困っている」 「税金が高くなる前になんとかしたい」
そのお悩み、土地家屋調査士法人えんが引き受けます。
あなたの肩の荷を下ろし、大切な資産を次の方へバトンタッチするためのお手伝いをさせてください。



