未登記建物の登記は誰に依頼する?土地家屋調査士と司法書士の役割を完全整理 ~「建物の出生届(表示)」と「権利の名札(権利)」。二人の専門家の連携プレー~

「実家を売却しようとしたら”建物が未登記”と言われた」

「銀行から”融資には登記が必要”と指示された」

「相続の手続きを進めたいのに、古い離れが登記簿に載っていない」

こうした場面で立ちはだかるのが 未登記建物 の問題です。

解決策を検索すると、必ず次の2つの資格が出てきます。

  • 土地家屋調査士(表示=建物の物理的情報を登記する専門家)
  • 司法書士(権利=所有権や担保など権利関係を登記する専門家)

「結局どっちに連絡すればいいの?」という疑問に対し、結論はシンプルです。

1. 【結論】最初の連絡先は「土地家屋調査士」

未登記建物の解消は、基本的に以下の2段階で進みます。

まずは「器(うつわ)」を作らなければ、権利を入れることはできません。

1. 土地家屋調査士による「建物表題登記(表示)」
o 建物の物理的状況(所在・種類・構造・床面積)を登記します。
o これが「最初のステップ」です。
2. 司法書士による「所有権保存登記(権利)」
o 誰が所有者かを登記し、権利証(登記識別情報)を作成します。
3. ゴール
o 売却・融資・相続の手続きが可能になります。

そもそも「表題登記」は法律上の申請義務がある

建物を新築した場合や、表題登記のない建物を取得した場合、原則として所有権取得日から1か月以内に表題登記を申請しなければならないとされています(不動産登記法第47条第1項)。

放置されている未登記建物も多いですが、売却や融資のタイミングでは必ずこの義務を果たすことになります。

2. 徹底比較!土地家屋調査士と司法書士の役割の違い

項目土地家屋調査士司法書士
主戦場 表題部(表示)権利部(権利)
目的建物の「物理的現況」を公示所有権・担保など「権利関係」を公示
代表的な手続建物表題登記・表題部変更など所有権保存・移転・抵当権設定など
主な業務測量、図面作成、現地調査契約書チェック、登記申請代理

 
このように、「形あるもの(物理的状況)」を扱うのが土地家屋調査士「目に見えない権利」を扱うのが司法書士という役割分担になっています。

3. 第1走者:土地家屋調査士の仕事(建物表題登記)

1) 現況確認と図面作成がスタートライン

未登記建物は、法務局に”登記用の図面”がありません。

そのため、土地家屋調査士が現地で建物の形状・配置・各階の状況を調査・測量し、以下の図面を作成します。

  •  建物図面: 敷地内での建物の位置関係を示したもの。
  •  各階平面図: 各階の形状、床面積、求積方法を示したもの。

※図面には厳格な作成ルール(0.2mm以下の細線、JIS B4用紙など)があり、床面積も不動産登記規則上の計算ルール(壁芯計算・内法計算など)に則る必要があります。

不動産登記規則 第73条、第74条

(土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図の作成方式)

第七十三条 電子申請において送信する土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図は、法務大臣の定める方式に従い、作成しなければならない。書面申請においてこれらの図面を電磁的記録に記録して提出する場合についても、同様とする。

2 前項の土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図には、作成の年月日並びに申請人及び作成者の氏名又は名称を記録しなければならない。
第七十四条 土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図(これらのものが書面である場合に限る。)は、〇・二ミリメートル以下の細線により、図形を鮮明に表示しなければならない。

2 前項の土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図には、作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに、その作成者が署名し、又は記名押印しなければならない。

3 第一項の土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図は、別記第一号及び第二号の様式により、日本産業規格B列四番の丈夫な用紙を用いて作成しなければならない。

不動産登記規則第73条第1項の規定により法務大臣が定める土地所在図等の作成方式

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji101.html (法務省のサイト)

2) 「表題部所有者」を裏付ける資料集め(ここが難所)

表題登記では、「誰を所有者として表題部に載せるのか」を証明する必要があります。

新築時なら建築確認済証や引渡証明書がありますが、未登記案件では紛失していることが多いです。

そこで、以下のような資料を組み合わせて「所有権証明情報」を整えます。

ここがプロの腕の見せ所です。

  • 固定資産税の課税証明書・名寄帳、納税証明書(3年分)
  • 工事完了引渡証明書(工務店が存続している場合に再発行をうける)
  • 建築概要書、台帳記載事項証明書
  • 遺産分割協議書・相続関係説明図
  • 上申書

3) 申請・実地調査(現地調査)への立会い

申請後、登記官による実地(現地)調査が行われる場合があります。

土地家屋調査士は必要に応じてこれに立ち会い、確認事項の説明や資料の提示などを行い、手続が円滑に進むよう対応します。

手続きが完了すると、建物に「家屋番号」が付与され、登記記録(表題部)が作成されます。

4. 第2走者:司法書士の仕事(所有権保存登記)


表題登記が終わっても、それだけでは「物理的にこういう建物がある」という状態にすぎません。

ここから先、売却・融資・担保設定など実務で必要になる「権利部(甲区)(乙区)」の手続きは、司法書士の専門領域となります。

1) 「第三者に対抗できる状態」にする

不動産の権利は、登記(権利部)があることで第三者に主張(対抗)できると解されています(民法177条)。そのため実務では権利部の登記が未了だと、銀行融資や不動産売買の場面で登記の整備を求められることが一般的です。
司法書士は、この「権利の保全」に関する登記を行います。

2) 権利証の作成と税金の納付

所有権保存登記を行うことで、いわゆる権利証(登記識別情報)が発行されます。

また、この手続きには登録免許税(国への税金)がかかります。

一定の要件を満たす住宅には税率の軽減措置などがありますが、具体的な税額計算や適用要件の判断については、専門家である司法書士にご相談いただくことになります。

※私たち土地家屋調査士法人えんでは、連携する司法書士をご紹介し、スムーズに引き継ぎを行います。

5. 依頼順を間違えるとどうなる?(スムーズな連携のために)


「権利の登記(司法書士の業務)」を行うためには、前提として「表示の登記(土地家屋調査士の業務)」が完了している必要があります。

もし先に司法書士事務所へ相談に行かれた場合でも、未登記であれば「まずは土地家屋調査士に測量と表題登記を依頼してください」という流れになることが一般的です。

二度手間を防ぐためにも、「建物が登記されていない」と分かった時点で、まずは土地家屋調査士にご相談いただくのが最短ルートです。

6. 費用と期間の目安(土地家屋調査士業務について)


未登記案件は、資料の有無や相続人の数によって難易度が大きく異なるため、費用には幅があります。

ここでは、私たち土地家屋調査士が行う「建物表題登記」に関する目安をお伝えします。

土地家屋調査士(建物表題登記)

  • 報酬目安: 15万~30万円程度(一般的な戸建ての場合)

  (建物の規模、資料調査の難易度、図面作成の手間、相続関係の複雑さにより変動します)

  • 期間目安: 3週間~2ヶ月程度

  (資料不足や相続人多数の場合は長引くことがあります)

  • 登録免許税: なし(実費として証明書取得費などはかかります)

【ご注意:司法書士の費用について】

表題登記完了後に行う「所有権保存登記」には、別途、司法書士報酬と登録免許税(実費)が必要です。

これらの費用は物件の評価額等によって異なるため、連携先の司法書士より個別にお見積もりをご案内します。

7. 「土地家屋調査士法人えん」のワンストップ対応

「二つの事務所に別々に説明するのが大変」

「どちらに何を渡せばいいか分からない」

こうしたお客様の負担を減らすため、土地家屋調査士法人えんでは、信頼できる提携司法書士と連携してワンストップサービス(窓口の一本化)を提供しています。

  • 窓口の一本化: 最初の相談から、私たちが窓口となり全体の交通整理を行います。
  • 情報の共有: 調査士が集めた資料や相続情報を、お客様の了解を得て司法書士へ引き継ぎ、二度手間を防ぎます。
  • スケジュールの最適化: 「いつまでに売りたい」「融資実行日」などのゴールから逆算して、最短ルートで工程を組みます。

※司法書士業務(権利に関する登記申請代理等)については、提携司法書士が直接担当・契約を行います。

8. まとめ:迷ったら「表題登記(調査士)」から

未登記建物の解決は、以下の順番が鉄則です。

① 表題登記(土地家屋調査士) → ② 保存登記(司法書士)

「売却期限がある」「融資実行日が決まっている」「相続で揉めそう」など、条件が付くほど早めの着手が効果的です。

迷ったら、まずは第1走者である土地家屋調査士にご相談ください。

全体の工程表を作成し、解決への道筋をクリアにします。

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