【保存版】プロが解説!境界標の押さえるべきポイント

「あなたの土地に境界標はありますか」と聞かれたらあなたは答えられますか。

大抵の人は分からないと答えるのではないでしょうか。
「ありますよ。10年前に買った時に確認したから。」という人もいるかもしれません。
でも本当に10年前に確認した境界標はまだ存在しているでしょうか。

地震や塀の工事で無くなっていたり、位置が動いていたりしていませんか。

実際、測量してみると「境界標の位置がずれていた」「境界標が無くなっていた」などはよくあることです。

そのままにしておくと知らず知らずのうちに隣地との境界トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

境界標があると無いとではどうなるのか?

これから境界標について何かについて解説いたします。
ぜひ、ご参考にしてください。

1 境界標とは

この章では、境界標とは何か、境界標の役割や管理、境界標のメリットについて解説していきます。

1-1 境界標とは何か

境界標とは連続している土地を区分するもので、目にみえない境界点を現地で示す標識です。

標識には様々な種類があります。例えば、御影石、コンクリート、プラスチック、金属などの材質でできている杭の頭部に十字や矢印(上、下、ななめ)で境界点を示したものです。

土地は永遠に残るものです。そこには大切な思い出もたくさんつまっていると思います。自分だけが境界を知っているのではなく、第三者にも公示して守っていくことが必要です。それは、子どもや孫に対する責任でもあります。

土地の境界標は購入した時や相続した時にしっかりと確認されている方は多いと思いますが、その後管理までされている方は少ないです。しかし、土地の管理・運用には「境界標」がとても重要です。

境界標に関しては法律でも下記の通り定められています。

(民法及び刑法より引用)

  (境界標の設置)
民法 第223条 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
  (境界標の設置及び保存の費用)
民法 第224条 境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。

  (境界標等の共有の推定)
民法 第229条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。
  (境界損壊)
刑法 第262条の2 境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

1-2 境界標の役割

境界標の役割とは、現地において境界(筆界)がどこなのかを視認できることです。

境界標とは前述したとおり、土地の境界を示す標識です。

境界標があればどこまでが自分の土地か誰が見てもすぐにわかります。逆に境界標がなければどうでしょうか。自分の土地がどこまでかはっきりしていなければ、自分もお隣の方もどこまでを自分の土地として使ってよいか分かりません。
そうなってしまうと、管理どころか自由に使うこともできず、最悪、境界をめぐるトラブルに巻き込まれかねませんよね。

1-3 境界標の管理

境界標を正しく管理することが大切になってきます。
3つのポイントを紹介します。

①境界標が設置されているかを確認
自分で土地を使用するにしても、売却・相続等を予定していても、所有する土地の範囲が明確であることが必要です。境界標で第三者に境界(筆界)を明示することで事前にトラブルを防止できます。

②地積測量図があるかを確認
境界標の管理には法務局にある地積測量図が有効です。土地の地積測量図が法務局にあるかを確認してみましょう。地積測量図は最寄りの法務局で取得することができます。平成17年以降に作成された地積測量図には原則、座標値や辺長が記載されていて、境界標が移動・亡失・破損されていても地積測量図を基に位置を復元できます。
地積測量図が無かったり、平成17年以前の地積測量図しかない土地もあります。

③登記面積と現況面積を確認
地積測量図が法務局にあったとしても何十年も前に作成されたものである場合、当時の測量技術は大分未熟であったため、実際とは大きく違っている場合があるほか境界標の表示がないものがほとんどです。地積測量図が無い場合も同様です。境界標を管理するためにも、このような場合、信頼できる土地家屋調査士に測量を依頼して測りなおすのもいいと思います。現況と登記を一致させることが大切です。

境界標を管理するため、境界標が無かったり、地積測量図の確認が出来ない場合は、境界の専門家である土地家屋調査士に相談することも検討しましょう。

1-4 境界標のメリット

境界標を確認し現地に表示し、はっきりさせておくことは5つのメリットがあります。

①境界問題を予防する
境界標によって境界(筆界)が明確であれば、不要な境界問題は起こりません。

②財産の侵害防止になる
境界標によって第三者に土地の範囲を公示することにより、侵害の予防になります。

③売買や相続を迅速に行う
境界標によって土地の形状や面積が明確であれば、売買や相続を迅速に行うことができます。隣地が空き家になって何年も経過していたり、相続が発生して相続人が莫大に増えていたりすると、その分測量に時間と手間がかかり下手をすると境界を確定できないこともあります。

④正確な地図の基礎となる
境界標を設置することは、登記所の地図に自分の土地を正しく表示する基礎になります。

⑤不動産登記制度の充実につながる
境界標の設置は正しい登記、正しい地図の基礎となり、不動産登記制度を充実させ、安全な不動産取引につながります

2 境界標の種類

境界標というのは、さまざまな種類があります。
場所によって入れるものが違ってきます。
主に下記の種類があります。


コンクリート杭
一般的に永続性のある境界標として最も多く使用されています。
土の地面に入れます。


石杭
御影石や花崗岩などでできた境界標で美しく堅く最も優れた永続性があります。
土の地面に入れます。


プラスチック杭
加工が簡単なため様々な形状のものがあります。軽くて安易に設置することができますが、コンクリート杭や石杭のような永続性はありません。
土の地面に入れます。


金属標
真鍮(しんちゅう)、ステンレス又はアルミなどでできたプレート上の標識でアンカーピンを設置することで堅牢に設置することができます。
ブロック塀の上やL型側溝などに入れます。


金属鋲
金属性の境界標でコンクリートやブロック塀の側壁などにドリルで穴をあけ、金属鋲を打ち込み固定します。
道路のアスファルトなどにも入れるほか、石杭の上に打ち込んだりもします。


木杭
サイズは様々ですが1〜2年程度で腐食しますので耐久性に欠けます。仮杭又は一時的な杭として使用します。

 

3 境界標の正しい見方

境界標とは様々な種類がありますが、頭部には位置を特定する下記のようなしるしがついています。

摩耗や摩擦によって窪みや印が判別できないものもあり、注意が必要です。

一方で矢印ではなく一本線が掘られただけの境界標もあります。
これは境界点ではなく境界線の境(方向)を示したものになります。何らかの事情で境界点を決められなかった場合に設置した可能性があります。こういう場合は境界点についてよく確認する必要があります。

自治体によっては、自治体の所有する土地(道路)と民有地との境に独自のマークをいれているところもあります。
道路沿いに入っていることが多いのでどんなものがあるのか探してみるのも面白いかもしれません。

(逗子市の境界標)

 

(横浜市の境界標)

4 境界標を正しく設置する

この章では、境界標設置の際のポイント、無い場合の探し方・原因、境界標の依頼先について解説します。

4-1 境界標の設置

境界標は正しく設置しましょう。
誤った位置にあるとトラブルの元にもなってしまいます。

設置するときは下記6つの気を付けているポイントがあります。

①不動性
簡単に移動しないよう堅牢に設置する
②永続性
耐久性のある堅牢な境界標を設置する
③視認性
境界標が誰にでもわかるように、ペンキを塗るなどして明瞭にしておく
④特定性
自分の土地の境界標は、設置状況を写真撮影するなどして、位置を特定できるようにする
⑤証拠性
境界標を設置した場合は、境界を確認した経緯がわかるように、関係者間で筆界確認書などを保管しておく
⑥管理性
現地の状況(地目・地積など)と登記されている記録とに異なる点がある場合には、現況と登記記録を一致させておく

上記ポイントに気をつけていても、もし、境界標が正しい位置ではなく工事や天災などによりあなたの土地の方に動いており、お隣さんが境界の位置を誤解してあなたの土地に寄せて塀を建ててしまうようなことが起こってしまうかもしれません。

そのようなことが起こってしまう前に、もし傾いていたり、かけていたり、位置がおかしいと思った場合はすぐ土地家屋調査士に相談してみましょう。

4-2 境界標がない場合

境界標がない場合は、以下の方法で探してみましょう。

・(もしあれば)境界・筆界確認書にある境界標の種類・写真を確認して探す
・近くの法務局で地積測量図を取得し、境界標の種類を確認して探す
・塀の上に金属標がないか確認する
・(可能であれば)地面を掘って確認する

境界標をさがす作業は、まるで宝さがしみたいですが、実際境界標がない土地は多いです。
例えば、

・天災や道路工事・塀の築造で移動・亡失してしまった
・盛り土されて見えなくなってしまった

などの場合もあります。

境界標は法律でも規定されている通り、重要なものです。
勝手に動かしたり、壊したりすると法律で裁かれることもあります。
みなさんも境界標の状況を時々再確認することが大切です(例えばオリンピックのある年ごととか)

亡失しているのを発見したり、位置がおかしいと感じた際には、境界の専門家である土地家屋調査士に相談することを検討しましょう。

4-3 境界標の依頼先

境界標の依頼先は土地家屋調査士です。
土地家屋調査士は土地の専門家であり境界(筆界)のプロフェッショナルです。

そもそも測量会社と土地家屋調査士は違います。土地家屋調査士は測量全般の他に不動産の表示に関する登記に必要な調査測量を業としています。
いわば土地家屋調査士は土地の専門家です。土地の現状を正確に調査、測量をして、かつ表示に関する登記ができるのは国が認めた「土地家屋調査士」の資格をもつ者のみです。

5 境界標の注意点

境界標に関して近隣トラブルに発展することは多々あります。

境界標に関して隣地が納得してくれないので境界確定ができず土地を売買することができないことはよくあります。

そういう場合は、訴訟や裁判所の調停があると思います。
他に、
・筆界特定制度
というものがあります。
(筆界特定についてはこちらの記事(筆界特定)を参照してください)

しかしながら、裁判も筆界特定制度もトラブル解決の一つの手段ではありますが、時間・お金・手間がかかります。そうなってしまう前にトラブルを予防することが一番ですね。

6 まとめ

日常生活を安全かつ安心して過ごすには、さまざまな生活環境が整っていることが必要だと思います。その中でも住まいの土台である土地のことは最も大切なことの一つではないでしょうか。

もし隣人と土地の境界トラブルに発展した場合、住み続けるのがつらくなってしまうようなことになるのは避けなければなりません。
事前に土地トラブルを避けるためにすべての原点である「境界標」ははっきりさせておくことはとても重要な事です。
なにか不安なこと・心配なことがありましたら、土地家屋調査士にお任せください。
お客様の大切な土地を守るお手伝いの一端になれば幸いです。

参考:https://www.3-kai.jp/tochikaoku/tokusuruchishiki.pdf

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コメント

「【保存版】プロが解説!境界標の押さえるべきポイント」に対する2件のコメント

  1. お隣が土地の境にある溝の境界について納得されて無いので困ってます。

    1. コメントありがとうございます。
      弊所ではご来所いただいてのご相談、ZOOMによるご相談もお受けできます。
      必要があれば弊所HPよりお申込みください。

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